汕頭刺繍

汕頭刺繍の発祥は、広東省東部の都市「汕頭」と言われており、「中国三大刺繍の一つ」として知られています。

1858年に天津条約が締結され、1860年以降、汕頭市を中心とした地方にヨーロッパ人の住居やオフィスが建設されました。その頃、キリスト教の宣教師たちがヨーロッパの感性と技法を地元の婦人たちに教えたのが始まりです。

中国の伝統的な鳳凰や龍をモチーフにするなど、古来の刺繍技法と調和させ、現在の汕頭刺繍が出来上がりました。テーブルクロスやナフキン、ハンカチなどに刺繍を施したものが一般的です。隙間を開けて飾り糸を施すことから「絹の彫刻」と呼ばれ、人気の刺繍技法です。

糸を抜いてから刺繍を施すため、生地が丈夫でなければ行うことができず、生産数の少ない刺繍となります。

 

汕頭刺繍には大きく分けて2種類の刺繍技法があります。どちらの技法も高度な技術を要する技法都市、工芸品として扱われることもあります。

また、生地を直接はさみで切り、糸を引き抜くため、失敗が許されず、職人にとって集中力が求められる刺繍技法です。

 

抽綉(ツオシュウ)

抽綉(ツオシュウ)は織り上がった生地の経糸、横糸を数本引き、空間を開け、飾り糸を通す刺繍技法です。生地で経糸は経糸、横糸は横糸同士、両端から同じ糸を切り、糸を引き抜きます。すると、生地上で糸の残っている部分と糸が抜かれた部分に分かれ隙間ができます。その後、生地に飾り糸を施し、美しい仕上がりを目指します。

汕頭 糸抜き中
汕頭 抽綉1

上左:横糸のみ引き抜いた後の生地

横糸の本数が少なくなっている分、生地に隙間ができています。

 

 

上右:横糸、経糸を抜いた後の生地

糸が無くなっているために完全に四角ができています。この上から飾り糸を施していきます。

 

:飾り糸を施した状態の生地

拉綉(ラシュウ)

拉綉(ラシュウ)は、抽綉と同様に、生地の両サイドにはさみを入れ、糸を引き抜きますが、抽綉ほど糸は引かず、飾り糸を施す段階で空間を広げる技法です。

糸をひっぱり穴を広げることで、抽綉と違い、空間を様々な形に施すことができます。

飾り糸で糸を引き、空間を開けています。

そのため、隙間が四角ではなく丸に近い形になっているのが分かります。

左の刺繍は空間の中にも糸を1本通して飾りをつけています。

汕頭刺繍着物

汕頭刺繍の着物は透け感があるため、初めてご覧になられた方から「夏物の着物ですか?」と聞かれることが少なくありません。

しかし、汕頭刺繍の着物は通常の着物と同じように、袷、単衣でお召いただく着物となっています。

胴裏八掛に色の入った生地を使用することで、オリジナルの汕頭刺繍着物として楽しんでいただけます。

また、単衣で仕立てた場合には、襦袢をシャレ襦袢にすることで、隙間から襦袢の柄を見せることができ、お洒落に着用いただけます。

他の刺繍と同様に糸の端をきれいに始末しているため、想像以上に丈夫で、単衣でも安心して着用いただけます。

 

色胴裏によって様々な風合いを見せる汕頭刺繍(ローケツ汕頭+色胴裏八掛)

汕頭刺繍のまとめ

  • 織り上げた生地の糸を数本引き抜き、穴(空間)を開けていく高度な技法
  • はさみで生地を直接切るため、失敗が許されない刺繍
  • 空間を開けた部分に飾り縫いを施し模様を作る
  • 立体感があり「絹の彫刻」と呼ばれる
  • もともとはヨーロッパの文化が中国に伝わり独自の発展を遂げた刺繍技法
  • 中国三大刺繍の一つとして有名
  • 色胴裏八掛やシャレ襦袢を使用することで、表に出る色を変えることができ、お洒落を楽しんでいただける着物

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